ムシムシした湿気を吸ってくれる?!
無垢木材の調湿作用と膨張収縮
インテリアに使用される木材には、テクスチャーの魅力や自然素材であることの安心感だけでなく、肌に伝わる温もりや香りなど、多くの効能が備わっています。
その中でも、「無垢木材の調湿作用と膨張収縮」は、内装材として無垢木材を使用するにあたっての最大の特長といえるでしょう。
“木”は、木材となっても呼吸している?!
“木は呼吸しています。”といっても、人間のように空気を吸ったり吐いたりする呼吸とはちがい、周囲の温度や湿度に合わせて空気中の水分を吸ったり吐いたりしているという意味で、“呼吸している”と表現されています。
特筆すべきは、切られて木材に加工されてもなお、この“呼吸”を続けるという点。乾燥した木材は自然に湿気を吸収・放出を繰り返し室内の湿度を調整しています。すなわち部屋の中が乾燥している状態では、木の中に含まれている水分を吐き出して縮み、逆に湿気の多いときには、余分な湿気を吸収して膨らみます。
こうした現象が“木材は生きている素材”といわれる所以でもあります。
木材の水分保持能力は、空気の数倍!!
ここで、空気と木材の水分を保持する能力を比較してみましょう。例えば、8畳ほどの部屋で25℃のときに、室内の空気が含むことができる水蒸気量(飽和水蒸気量)は、厚さ4mmで1平方メートルの広さのヒノキ板が飽湿したときの水分量に相当します。このように木材の湿度保持能力は空気中の湿度保持能力に比べて著しく大きいため、木材中からの水分の出入りだけで室内の湿度を適度にコントロールすることができるのです。
このことを実際に実験した結果を紹介しましょう。内装に木材を多く使った部屋(壁:スギ材)と少ない部屋(壁:ビニールクロス)2つの同じ広さの室内で、屋外の湿度と室内の湿度を測定したところ、室内に木材を多く使った場合は、木材使用率が少ない室内に比べて、外気の湿度が変動しても、室内の湿度は大幅な変動は見られず、変動する範囲を半分程度に抑えることができるという実験結果が報告されています。
木材に含まれる水分量の変化による木の動き
この水分交換による調湿作用は、わたしたちに過ごしやすさを提供しますが、その一方で膨張収縮というサイズ変化を起こします。そのため、無垢フローリングの施工に当たっては、温度・湿度変化による木の動きを考慮し、それを見越した“あそび”を設けることが重要となります。
木材中に含まれている水分量は、「含水率」という指標で表されます。含水率が高いということは多量の水分を含んだ状態であり、低いということは水分を吐き出してしまった状態となります。木材の膨張・収縮の動きは、この含水率によって異なります。
含水率の変化による木材の膨張収縮の大きさは、樹種によって異なり、その指標は「膨張収縮係数」で示されます。膨張収縮係数は、木材の含水率1%の増減に対して、どの程度、膨張または収縮するかを数値で表したもので、同じ樹種であっても材の切り方、すなわち板目と柾目とで異なります。一般的には、柾目材の膨張収縮係数は板目材の約半分とされています。
フローリングなどの板幅が、含水率の増減によって変化する度合いは、膨張収縮係数を用いて簡単に割り出すことができますが、木は生育条件によって、たとえ同じ樹種であっても材質に微妙な違いがあります。また、実際のフローリングは板目材と柾目材が混在するだけでなく、「追い柾」という斜めの木目の材が混入することがあるため、膨張収縮に関して得られた数値は、ひとつの目安とすることが前提となります。